急な転勤や家族構成の変化、より良い物件との出会いなど、住宅ローンの返済中でも自宅を売却するきっかけはさまざまです。そこで気になるのが「住宅ローンが残っている家を売ることはできるのか?」という点ではないでしょうか。
結論からお伝えすると、住宅ローンの返済中でも家の売却は可能です。ただし注意点がいくつかあるため、ご自身の状況に当てはめて対応していく必要があります。
この記事では、住宅ローンの残債(まだ返していない残りの借入)がある家の売却方法や注意点、売却時にかかる税金と特例について、高崎・前橋で不動産売却をお手伝いしているRoom’sが解説します。
- 住宅ローン残債がある家を売却するための基本的な流れ
- ローン残債の確認方法と抵当権抹消の仕組み
- アンダーローンとオーバーローンの違い
- オーバーローンの場合の4つの選択肢
- 売却時の税金と、譲渡損失の特例などの現行要件
1. 住宅ローン残債がある家を売却するには
住宅ローンが残っている家でも売却は可能です。ただし、原則としてローンの完済が必要なため、「完済を前提に売却活動を進められる」という表現が正しいかもしれません。
完済のタイミングは買主への引渡し時で問題なく、売却代金を残債の支払いにあてることができます。
家の売買は大きなお金が動くため、知識のないまま進めると損をする可能性があります。まずはローン残債と売却の相場額を調べましょう。その多い・少ないによって、やるべきことや流れが変わってきます。
2. ローン残債の確認と抵当権抹消
現在のローン残債を正確に調べる
自宅の売却を考え始めたら、まずは現在の正確なローン残債を調べることから始めましょう。家を売ったあとにローンが残るのかを確認するためにも、残高の把握は欠かせません。
- 契約時の返済予定表で確認する
- インターネットバンキングで照会する
- 金融機関から送られる残高証明書を見る
- 金融機関に直接問い合わせる(時間がかかる場合があるため、余裕をもって)
抵当権と「引き渡し時の抹消」がポイント
住宅ローンの完済が必要なのは、ローンを借りて購入した家には、一般的に抵当権が設定されているからです。抵当権とは、ローンの返済が滞った際に、銀行など金融機関が家を差し押さえて競売にかける権利のこと。家を借入金の担保にしているわけです。
返済が滞れば、金融機関は裁判所に申し立てて、担保の家を強制的に売却できます。売却代金は優先的に返済へあてられるため、基本的に抵当権が付いたままの家を買主に売却することはできません。
売却のポイントは、引き渡し時に抵当権を外す(抵当権の抹消)ことです。住宅ローンが残っていても、引き渡しのときに完済していれば問題ありません。引き渡し当日に残債を支払う場合は、抵当権の抹消の手続きも同時に進めます。
3. いくらで売却できるのか相場を知る
ローン残債がわかったら、次は家がいくらで売れるのか相場を調べます。家の売却価格を知るには、不動産会社へ査定を依頼しましょう。インターネットの一括査定サービスや匿名査定など、簡易的で便利な方法も数多くあります。
残債がある状態で売却する際に重要なのは、少しでも高く売ることです。査定額は不動産会社によって差が出ることがあるため、一社だけでなく複数の不動産会社に査定を依頼すると、おおよその売却可能価額がつかめるでしょう。
査定価格はあくまで予想で、売却を保証するものではありません。それでも、おおよその金額を知っておくことで今後の計画が立てやすくなります。
4. アンダーローンとオーバーローンの違い
ローン残債と売却相場を把握すると、住宅ローンの返済のめどを立てられます。残債と売却価格のどちらが上回るかで、売却方法が変わってきます。
| 状態 | 関係 | 意味 |
|---|---|---|
| アンダーローン | 住宅ローン残債<売却価格 | 家を売却すればローンを完済でき、プラスのお金が残る可能性がある |
| オーバーローン | 住宅ローン残債>売却価格 | 家を売却してもローンを完済できない |
オーバーローンは、住宅ローンを組んでからあまり期間が経っていない場合に多い状態です。返済の初期は返済額に占める利息の割合が大きいため、予想以上に残債が減っていないことは十分にありえます。
5. オーバーローンの場合の売却方法
オーバーローンの状態でも、家を売却することは可能です。しかし、売却時に残債を0にして抵当権を抹消する必要があるため、そのままでは現実的な方法とはいえません。考えられる主な選択肢は次の4つです。
- 住み替えローンを利用する
- 無担保ローンを利用する
- 任意売却をする
- 自己資金で一括返済する
住み替えローンを利用する
家を売却して新居へ住み替える予定なら、住み替えローンを利用する方法があります。住み替えローンとは、現在のローン残債と新居の住宅ローンをひとつにまとめられるローンのこと。オーバーローンで足りない分を、新居のローンに上乗せするイメージです。
- 家の担保価値を超えて融資を受けるため、金融機関の審査は厳しくなりやすく、審査に通らない可能性もあります。
- 住宅ローンを延滞したことがあり、個人信用情報に登録されている場合は、融資を受けるのは難しいでしょう。
- 今の家の売却と新居の購入の決済時期をそろえる必要があるため、タイミングの調整を慎重に行う必要があります。
無担保ローンを利用する
無担保ローンという別のローンを借りる方法もあります。無担保ローンとは、抵当権のような担保を用意せずに借りられるローンで、残債をまかなう資金を担保なしで確保できます。
デメリットは、一般的に担保のある住宅ローンより金利が高くなることです。金利は金融機関や商品、借りる方の状況によって異なるため、家を売却できても返済の負担が大きくならないか、事前に必ず確認しておきましょう。
また、住宅ローンに比べて借入期間が短く、借入可能額も少なめになりやすい傾向があります。無担保ローンで借りられる額が残債に届かない場合は、この方法でオーバーローンの家を売ることはできません。
任意売却をする
任意売却とは、売却価格よりローン残債が多い場合でも、金融機関の同意を得たうえで家を売却する方法です。専門知識のある不動産会社が、債権者である金融機関との間に入って交渉するのが一般的です。
手続きは通常の不動産売却とほぼ同じですが、後々のトラブルを避けるため、任意売却に詳しい不動産会社を選ぶと安心でしょう。
任意売却後も、残ったローンは返済していく必要があります。売却後の返済計画は必ずしっかり立てておきましょう。将来の返済が難しいと判断される場合、任意売却はおすすめできません。
自己資金で一括返済する
売却価格で残債を完済できない場合、預貯金など自己資金でまかなえるなら、それが最も負担の少ない方法です。住み替えローン・無担保ローン・任意売却は、いずれも今以上に負担が増える方法だからです。売却代金と預貯金などで一括返済できれば、余計な負担を増やさずに新しい生活を始められます。
ただし、不動産の売却にはさまざまな諸費用がかかります。残債の補てんに預貯金を全額使ってしまうと、諸費用を支払えなくなるおそれがあるため、あらかじめ諸費用の額を調べておきましょう。
6. 不動産を売却したときにかかる税金
住宅ローンが残っている家の売却では、売却方法や残債の対処に目が向きがちですが、税金の正しい知識も必要です。売却時にかかる税金は、ローン残債のあるなしに左右されるものではありません。
ただし、所有期間によって税率が変わったり、控除や軽減税率の特例が使えたりとさまざまなケースがあります。損をしないためにも、しっかり押さえておきましょう。
売却時にかかる主な税金
不動産を売ることを「譲渡」、取得時の価格と売却時の価格の差から得られる利益を「譲渡益(譲渡所得)」といいます。譲渡益が出ると、所得税・復興特別所得税・住民税が課税されます。これらをまとめて譲渡所得税と呼ぶことが多く、確定申告をして納めます。
| 税金 | かかる場面 |
|---|---|
| 印紙税 | 売買契約書を作成するとき |
| 登録免許税 | 抵当権を抹消するとき(不動産1個につき1,000円) |
| 譲渡所得税(所得税・復興特別所得税・住民税) | 売却で利益(譲渡所得)が出たとき |
| 消費税 | 仲介手数料など、売却時に支払う手数料にかかる |
税金の種類によって計算方法や支払い方法、節税の仕方が異なるため、それぞれの内容を把握しておくことが大切です。抵当権抹消の手続きを司法書士に依頼する場合は、登録免許税とは別に報酬がかかります。
譲渡所得税の計算方法
譲渡所得税=課税譲渡所得×税率
課税譲渡所得=譲渡価格-(取得費+譲渡費用)-特別控除額
譲渡価格は不動産を売却した金額、取得費は売却した不動産を取得したときに支払った金額など、譲渡費用は売却する際に支払った費用のことです。
税率は、売却した年の1月1日時点の所有期間が5年以下か5年超かで異なります。所得税に加えて、所得税額の2.1%の復興特別所得税と住民税がかかり、合計は次のとおりです。なお、譲渡所得が0円以下であれば譲渡所得税はかかりません。
| 区分 | 所得税 | 復興特別所得税 | 住民税 | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 短期譲渡所得(5年以下) | 30% | 0.63% | 9% | 39.63% |
| 長期譲渡所得(5年超) | 15% | 0.315% | 5% | 20.315% |
(参考:国税庁タックスアンサー)
令和8年度税制改正により、令和9年1月1日以後に生じる所得からは、復興特別所得税が1.1%に下がり、防衛特別所得税(所得税額の1%)が新たにかかります。付加税の合計は2.1%のままなので、合計税率は変わりません。
7. ローン残債がある家を売る際に使える税金の特例
ここからは、マイホームを売却した場合に、一定の要件を満たすと受けられる特例を紹介します。利益が出る場合と損失が出る場合で使える特例が違うため、ご自身の状況に合わせて確認しましょう。
3,000万円の特別控除
3,000万円の特別控除とは、マイホームを売って譲渡所得が出ても、最高3,000万円まで控除できる制度です。所有期間の長短に関係なく使えます。
- 今住んでいる家を売るか、住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る
- 売った年の前年・前々年に、この特例やマイホームの譲渡損失の損益通算・繰越控除の特例を受けていない
- 売った年・前年・前々年に、マイホームの買換えや交換の特例を受けていない
- 親子や夫婦など「特別の関係がある人」への売却でない
(参考:国税庁タックスアンサー)
10年超所有軽減税率の特例
所有期間が10年を超えるマイホームを売却した際に、軽減税率が適用される特例です。売却した年の1月1日時点で、家屋と敷地の所有期間がともに10年を超えていることが要件です。
通常の長期譲渡所得は合計20.315%ですが、課税長期譲渡所得金額のうち6,000万円以下の部分は、次のように税率が低くなります。
| 区分 | 所得税 | 復興特別所得税 | 住民税 | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 6,000万円以下の部分 | 10% | 0.21% | 4% | 14.21% |
| 6,000万円超の部分 | 15% | 0.315% | 5% | 20.315% |
(参考:国税庁タックスアンサー)
なお、この特例は3,000万円の特別控除と併用できます。
居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除
マイホームを買い換える際に売却で損失が出た場合、その損失をその年の他の所得と損益通算(相殺)でき、控除しきれない分は翌年以後3年間繰り越せる特例です。令和9年12月31日までの譲渡が対象です。
- 売った年の1月1日時点で所有期間が5年を超えるマイホームを売る
- 売った年の前年1月1日から翌年12月31日までに、床面積50平方メートル以上の新居を取得し、取得した年の翌年12月31日までに住む
- 新居を取得した年の12月31日時点で、償還期間10年以上の住宅ローンがある
- 繰越控除は、合計所得金額が3,000万円以下の年に限る
(参考:国税庁タックスアンサー)
特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除
住宅ローンが残っているマイホームを、ローン残高を下回る金額で売却して譲渡損失(赤字)が出た場合に、他の所得と相殺し、控除しきれない分を翌年以後3年間繰り越せる特例です。こちらも令和9年12月31日までの譲渡が対象です。
買換え等の特例はマイホームの買い換えが条件なのに対し、こちらは新しくマイホームを買わなくても利用できます。オーバーローンで売却する場合に関係の深い特例です。
- 売った年の1月1日時点で所有期間が5年を超えるマイホームを売る
- 売買契約日の前日に、償還期間10年以上の住宅ローン残高がある
- 売却価額がその住宅ローン残高を下回っている
- 繰越控除は、合計所得金額が3,000万円以下の年に限る
- 「特別の関係がある人」への売却でない
(参考:国税庁タックスアンサー)
この特例で控除できる損失の上限は、「売買契約日の前日の住宅ローン残高 - 売却価額」です。つまり、オーバーローンになっている部分が限度額の目安になります。
この記事は2026年9月時点の制度にもとづいています。税制や手続きは改正されることがあるため、実際の申告・登記の前に、国税庁・法務局などの最新情報や専門家(税理士・司法書士)にご確認ください。
よくある質問
まとめ
- 住宅ローン残債がある家でも、引き渡し時に完済して抵当権を抹消すれば売却できる
- まずはローン残債と売却相場を調べ、アンダーローンかオーバーローンかを確認する
- 査定は複数の不動産会社に依頼する
- オーバーローンの場合は、住み替えローン・無担保ローン・任意売却・自己資金での一括返済を検討する
- 税率は合計で長期20.315%・短期39.63%。10年超の軽減税率は6,000万円以下の部分が14.21%
- 損失が出たら、令和9年12月31日までの譲渡が対象の譲渡損失の特例も確認する
特にオーバーローンでの売却になる場合は、実績があって信頼でき、適切な判断をしてくれる不動産会社を見つけることが大切です。方法や知識を知らなかったために損をすることがないよう、しっかり理解しておきましょう。
弊社は地域密着のネットワークを活かし、高崎・前橋を中心に不動産に関わってきました。不動産売却は、地域の相場を熟知していないと希望の価格や期間での売却が難しくなります。売主様の利益を考え、できる限り早く、高く不動産を売却するお手伝いをいたします。不動産のご売却をお考えの際は、ぜひお気軽にご相談ください。














